2023年1月13日(金)

<ふるさとと文学2022>「開高健の茅ヶ崎」イベント開催しました

<ふるさとと文学>「開高健の茅ヶ崎」

公益財団法人開高健記念会は2023年1月7日(土)、映像と朗読、シンポジウムで開高健の足跡をたどるイベント<ふるさとと文学>「開高健の茅ヶ崎」を茅ヶ崎市民文化会館で開催しました。

多数の応募者の中から抽選された約600人の開高ファンが集まった会場は熱気に満ち「没後33年にして開高健はなお健在」(永山義高理事長)の思いを新たにしました。

■映像と語りで生涯ふりかえる


日本最強のクリエイター集団・日本ペンクラブの企画監修によるイベントは3部構成。作家の吉岡忍さんが脚本を手がけた第1部の映像ライブ「戦争という原郷あるいは現況、そして幻境~開高健の人・作品・世界」では、戦中戦後の大阪で空襲と敗戦、空腹と貧困を生き延びた少年時代から文学への目覚め、ベトナム戦争体験、そして代表作「夏の闇」執筆へと至る開高の人生をたどりました。

舞台上では、NHK大河ドラマ「いだてん」にも出演した活動写真弁士の片岡一郎さんが、戦争と格闘した開高の思いを躍動的な語りで再現してくれました。 

■朗読劇で名優共演


第2部の朗読劇「掌のなかの海」では、最後の短編集『珠玉』のなかの1編を中村敦夫さん、竹中直人さんという渋い名優2人が共演。

物語のカギとなる宝石「アクアマリン」が登場する場面では照明が青く変わり、会場は幻想的なイメージに包まれました。

■行動する文学


第3部のシンポジウム「開高健と茅ヶ崎」では4人のパネリストが開高文学への思いを熱く語り合いました。

『長靴を履いた開高健』などの著書がある作家の滝田誠一郎さんは「開高さんの文学は『行動する文学』。見聞きしたものをストレートに書くとノンフィクション、文学的に書き上げると純文学、軽く書くと様々なエッセイになる」と語り、早稲田大学教授のドミニク・チェンさんは「修辞の使い方とかフレーズの長さとか、フランス語的な読み方ができる日本語の文体だ」と分析しました。


「週刊朝日」編集者として開高の連載「ずばり東京」「ベトナム戦記」を担当した永山義高理事長は「純文学の代表作『夏の闇』は『ベトナム戦記』から生まれた。彼の作家人生にとって大きなターニングポイントになった」と振り返りました。

■すべての世界につながる茅ヶ崎の机


作家で日本ペンクラブ会長の桐野夏生さんは「私の若い頃は、開高健を読まなければ一人前の学生とは言えないというくらいの存在だった」と懐かしむ一方、「悪妻」と呼ばれた開高の妻、牧羊子にも触れ、「夏目漱石の鏡子さんもそうだが、文豪の妻というのは弟子たちによって悪妻というイメージをつけられることが多い。牧さんの話は胸が痛い」と歎きました。

シンポジウムの司会を務めた作家のドリアン助川さんは「遠心力で世界を旅し、文章を書いたのは茅ヶ崎の机。認識が世界と同等であるならば、あの茅ヶ崎の机にすべての世界とつながる道があった」と話していました。

イベント当日の様子