2024年4月27日(土)
茅ヶ崎市開高健記念館にて、企画展「広告人・開高健の三つの顔」を開催中
開高健記念館では、2024年4月27日 (土)から2024年9月29日(日)まで企画展「広告人・開高健の三つの顔」を開催しております。
▼会 期:2024年4月27日(土)~2024年9月29日(日)
▼主催・会場:茅ヶ崎市開高健記念館
神奈川県茅ヶ崎市東海岸南6-6-64
小説家、ルポルタージュ作家、エッセイスト、旅人、釣り師、美食家など、多彩な顔を持つ開高健ですが、その生涯にわたって関わってきたもう一つの顔が<広告人> としての顔です。
1954年、23歳で大阪にあった壽屋(現・サントリーHD)に入社後、宣伝部で の活躍を経て58歳で亡くなる最晩年まで、開高健が遺していった数々の広告人とし ての足跡を三つのジャンルに分け、それぞれの顔を追いかけていくことで、時代や 社会にいかに多彩で強烈で魅力的な広告の世界を切り拓いていった存在だったのかを 振り返ります。
写真:壽屋(現サントリーHD)東京支店時代の開高健(中央) 右端は同僚でデザイナーの柳原良平
展示構成
※館内では作品のレイアウトや品目を一部変更する場合があります
◾️PR誌編集発行人・開高健
サントリー(当時・壽屋)入社時の開高健が最初に携わった仕事は酒販店向けに刊行されていた同社のPR冊子「発展」の取材担当で、全国各地の酒販店や酒 場を駆け巡っていました。その後、開高は東京支店に転勤して東京に移住。「発展」 に代わってより広く洋酒の魅力を世間に知らしめるためにPR臭のないPR誌と して1956年4月に創刊された「洋酒天国」の編集発行人となり、編集部には 後に直木賞作家となる山口瞳らも加わることになります。
写真: 壽屋顧客向け PR 誌「洋酒天国」1956年~1964年 編集発行人は開高健。トリスバーを支援するために制作された PR 誌で、トリスバーでしか手に入らない雑誌だった。
「洋酒天国」は昭和30年代の高度成長期、生活が豊かになり、洋酒が徐々に身近なものになっていくなかで、多彩な執筆陣を起用し、古今の酒や食文化にま つわる洒脱なエッセイや小説、紀行文、映画やスポーツの観覧・観戦記、さらにはヌードグラビアも挿入して、洋酒の愉しみ方を広めただけでなく、その独創的 な内容で評価が高まっていきます。
それに連れて徐々にページ数も部数も増え、 創刊当初は2万部だった発行部数は最盛期には20万部にもなり、1964年 まで全60冊が刊行されました。その充実ぶりから<夜の岩波文庫>とも称され ました。
写真:「洋酒天国」創刊号表紙 1956年4月
◾️コピーライター・開高健
宣伝部に配属後、コピーライターの仕事をやり始めた開高健が1956年に 同僚のデザイナーである柳原良平と正式にコンビを組み、最初に制作したのが 「明るく楽しく暮らしたい そんな想いがトリスを買わせる 手軽に夕餉に花を 添えたい そんな想いがトリスを買わせる」というコピーのトリスウイスキーの 新聞広告でした。
その後も開高の「『いつもの?』『ウン』『トリスね』『アア』『ストレート?』 『ソウ!』」といった日常のさりげない会話を再現した簡潔で行替えの多い軽快な コピーや、「入ってきて 人生と叫び 出ていって 死と叫ぶ」といった人生訓的なコピーと、柳原の情感たっぷりの切り絵で構成されたスッキリしたデザインの新聞広告は人々の眼と心を惹きつけます。
以後10数年にわたり、ユーモアとペーソスに溢れ、創意を凝らした新聞広告が数多く作られていきました。
とりわけ、1961年に書かれたコピー「『人間』らしくやりたいナ トリスを飲んで『人間』らしくやりたいナ 『人間』なんだからナ」は名コピーとして広く知れ渡り、戦後広告史に残る名作となりました。
写真: 上:1956年2月掲載、左下:1957年11月掲載、右下:1961年2月掲載(いずれも新聞広告)
◾️CMタレント・開高健
1958年、27歳で小説「裸の王様」で芥川賞を受賞した開高健は、その後、小説家やルポライターとして多忙を極め、1963年にサントリーの嘱託を辞し、翌年に柳原良平や坂根進、山口瞳らと広告会社サン・アドを創設、取締役に就任しました。
ある時、同社社屋の隣のビルにあった釣具店内で同僚のCMディレクターである東條忠義と偶然鉢合わせ、釣り好き同士が釣り談義をしていくなかで 釣りをテーマにしたテレビCMを思いたちます。どうせなら釣れない設定のほうが面白いのではと二人で企画、開高自らが出演して北海道の釧路湿原でロケ撮影し、1972年にオン・エアされたのがサントリー角瓶のテレビCMでした。
写真:開高自らが出演した初のテレビ CM サントリー角瓶「釣れない」篇 1972年放映
右手の小指を立ててグラスを持ってウイスキーを飲む姿や、魚が釣れないこと で「一体、日本はどうなるのだろうか?」と嘆くナレーションのCM が、またその2年後には、釣りに悪戦苦闘する男の姿に重ねて「男の遊びはちょっと女にはわからない」と居直るナレーションのCMが話題となりました。さらに1979年からは南北アメリカ両大陸縦断の釣行記の取材旅行に合わせて、アラスカやニューヨーク、アルゼンチンなど海外でロケ撮影したテレビCMも作られていきます。
その後、中国やイギリス、カナダでもロケ撮影が敢行され、開高はCMタレントの顔としても、茶の間でおおいに知られる存在となっていきました。
本展では、開高が亡くなる1989年まで、釣りをテーマにしたテレビCMの他、本人が出演した20作以上もある数々のCM作品をじっくりとご覧いただけます。
記念講演&展示レクチャー 実施のお知らせ
本企画展の実施にあたり、下記の通り、記念講演および展示レクチャーを開催いたします。
記念講演
▼日時:2024年6月1日(土) 13:00~14:30
▼講師:藤森 益弘 (開高健記念会 理事)
(プロフィール)
藤森 益弘 (ふじもり ますひろ)
1947年大阪生まれ。京都大学卒。開高健らが創設した広告制作会社サン・アドに 入社、CMプロデューサー、コピーライターとして新聞広告やテレビCM、PR誌 等の制作に携わる。その間、開高から文学的薫陶を受ける。開高の晩年数年間は彼が出演したテレビCMのプロデューサーとして国内外のロケにも同行する。開高との個人的な逸話などを挿入して描いた小説『春の砦』で2003年サントリー ミステリー大賞優秀賞受賞。小説家、評論家。現、開高健記念会理事。
▼参加料:無料 (ただし、入館料を別途、頂戴いたします) (先着順、当日申込)
▼場所:茅ヶ崎ゆかりの人物館 多目的館 (茅ヶ崎市開高健記念館 隣)
神奈川県茅ヶ崎市東海岸南6-6-64
▼予約方法:電話にて順次受付開始
5月1日(水)~5月31日(金)
※ 空きがあれば当日の茅ヶ崎市開高健記念館での申込も可
予約電話番号:0467-81-7148(茅ヶ崎市文化推進課)
展示レクチャー
▼日時:2024年5月4日(土)、7月6日(土) 13:00~14:00
▼講師:藤森 益弘 氏 (開高健記念会 理事)
▼参加料:無料 (ただし、入館料を別途、頂戴いたします) (先着順、当日現地申込)
▼場所:茅ヶ崎市開高健記念館
神奈川県茅ヶ崎市東海岸南6-6-64
<交通機関>
・JR 茅ヶ崎駅南口より約 2Km。
・東海岸北 5 丁目バス停より約600m (辻堂駅南口行き 辻 02 系 辻 13 系)。
・コミュニティバス 東部循環市立病院線
・松が丘コース 15番バス停 「開高健記念館」下車すぐ。
・館には普通車 7~8 台の駐車スペースがあります。